ネムレナイト観劇
千秋楽の日の今日、マチネ、ソワレ、両方に参戦。ソワレのほうのカーテンコールが多少それらしかったのを除いては、アドリブはほとんどなく、同じような演技であった。話は、コメディであって、ところどころ大人の小ネタが織り交ぜてあったりで、非常にテンポがいい。しかし、最後は、生きるということと、ひとを愛することという、究極のテーマを思い知ることになる。男と女の関係にある男女にお勧めだな。別に、重々しい芝居ではない。むしろ、痛快だ。ただ、無駄な時間もなく、無駄な気疲れもしない、いい芝居である。話は、幽霊を中心に進む。現実ではあり得ない設定だし、かといってテレビとか映画とかでも、なかなか見ることがない設定だし、そもそも小ネタの内容からしてテレビではやりにくいであろう。舞台ならではの可能性を追求していると思う。
田辺ともハンバーグとも呼ばれた刑事をはじめとする、劇団「大人の麦茶」の各役者が演じる濃い役、蔀守(しとみまもる)演じる誠実な刑事「春日部」、根岸つかさ演じるあまのじゃくで無邪気でかわいい「都蘭」、三宅法仁演じる若き(?)幽霊の「美治」、そして保田圭が演じる、未亡人から幽霊になり、艶っぽい役どころや、持ち味の歌声をいかんなく発揮してくれた宝子(たかこ)。極端な表現をすれば、無駄な出演者は1人もいない、というか、脇役が1人もいないという感じ。みんなが芝居をきちんと作り上げていたと思う。
連れとの打ち上げの場で話題にしたが、保田圭にとっては、大きな劇場からこういう小劇場まで、いろいろな舞台を踏むことが、かけがえのない経験になると思う。歌手であるべきなのか、役者であるべきなのか、本人の本当の思いは、知るところではない。ただ、夏や冬の定例のハロー!のコンサートを休んででも、立つべき舞台があるのなら、その方向を突き進んでほしいと思う。ハロヲタの中には「外部の舞台」を低く見る人もいるようだが、むしろ「外部の舞台」だからこそ、いまの保田圭にとっては意味があると思う。
主宰者も、座長も、ほかに所属があって、つまりは厳密には大人の麦茶の所属ではない。でも、劇団というのはよほどしっかりした理念がないと、「第九杯目」まで続くことはないと思う。これからもきらりと光るものを、放ってほしい。